かぜ
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はじめに

「かぜ」はもともと一般名称で、「かぜ」に該当する医学用語は「かぜ症候群」「急性上気道炎」「感冒」となります。インフルエンザは重症度が高く、「かぜ」には含みません。
鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、痰などに、発熱、全身倦怠感、食欲不振などの症状が出て、高熱を伴うことは少なく、通常は短期間で治ります。

ここに注意

ご自分で「かぜ」と思っていても、「かぜ」は万病の元とよく言われるように、ウイルス性の上気道炎が先行した後に二次的に細菌感染が起こって、急性中耳炎、急性副鼻腔炎、気管支炎、肺炎などを引き起こすことがあります。こうなると、自然に治ることは難しくなり、抗菌薬をのむ必要があります。
また「かぜ」をきっかけににおいや味がわからなくなることがあり、かぜの他の症状がよくなった頃に気付かれることが多いのですが、早く治療を始めた方が治りもよいです。
いずれにしても、かぜにしては症状が強いような場合は、早い目に耳鼻咽喉科の受診をお勧めいたします。

原因

かぜの原因の大半はウイルスですが、細菌、マイコプラズマ、クラミジアなどでも起こり、多くは飛沫感染であり、空気が乾燥すると鼻やのどの粘膜の防御作用が弱まって、これらの病原微生物が鼻からのど、さらには気管、気管支、肺などに感染しやすくなります。こうして炎症をひき起こした状態が「かぜ」です。

原因となるウイルスは全部でおよそ200種類あります。
大人でももちろんかぜに罹りますが、こどもは免疫が十分でないこと、保育園、幼稚園、学校と行った集団生活に入るために、とてもかぜに罹りやすいです。
当然流行があり、季節による特徴も見られます。冬のインフルエンザは大人でもよく知られていますが、こどもには夏、冬ともにいくつか特徴的なかぜが見られます。
夏の手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱、冬のパラインフルエンザウイルス、RSウイルス、ロタウイルス、ノロウイルスの流行がよく知られています。

診断

「かぜ」のは、症状を緩和させる治療(対症療法)によって、通常は数日間で改善します。そのため、通常の「かぜ」の場合に、原因のウイルスをわざわざ調べる必要性はほとんどありません。

ところが、「かぜ」と思って受診された患者さんでも、実は「インフルエンザ」だったということもあります。「インフルエンザ」は感染力が非常に強く、症状も激しいという特徴があり、通常のかぜとは別に取り扱う必要があります。

ここで大いに役に立つのが、病原体に対する特異抗体による免疫学的反応を利用した迅速診断キットで、簡単に検査ができて大体15分~30分で結果を出すことができます。
検査は100%の感度を示すものではないので、症状や病歴などから総合的に判断しますが、検査の結果、感染が証明されたら、インフルエンザでは抗インフルエンザウイルス薬による治療ができます。

迅速診断キットによって早い段階で診断がつけば、的確な治療や病気の大体の経過も予測できるほか、流行の拡大を防ぐことに役立ちます。
インフルエンザのほかに、アデノウイルス、RSウイルス、マイコプラズマ、A群溶連菌などについても開発されており、当院でも実施可能です。

症状

「かぜ」の主な症状を挙げます。

  • くしゃみ
  • 鼻水がでる
  • のどの痛み
  • せき
  • 声が枯れる
  • 発熱
  • 悪寒
  • 食欲減退
  • 下痢
  • 嘔吐

このように、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛みといった上気道症状が主な症状で、ここにしばしばせきや痰などの下気道症状を伴って、さらに程度の差がありますが、発熱、頭痛、全身倦怠などの全身症状もみられます。

治療

抗菌薬について

「かぜ」は基本的にウイルス感染であるため、対症療法のみで抗菌薬は必要ないとされていますが、ウイルスが上気道粘膜へ先に感染したあとで、細菌感染症が続いて起こることがあります。
たとえば心臓・肺・腎臓疾患などの基礎疾患がある方で、普段から通院を要するような方は、「かぜ」から二次感染を合併するリスクが高くなりますので、抗菌薬も状況に応じて必要になってきます。

また基礎疾患をもたない方であっても、以下のような症状がある時には細菌感染が疑われます。

  1. 3日間以上高熱が持続している
  2. 膿性の痰や鼻水がある
  3. 扁桃が腫れて、膿栓・白苔が付いている
  4. 中耳炎、副鼻腔炎が発症している
  5. 血液検査で強い炎症反応(白血球増多、CRP陽性、赤沈値の亢進)がある

上記の場合は、適正な抗菌薬服用が大切です。

対症療法について

「かぜ」の主な症状を緩和するときの要点を挙げます

  1. 発熱への対応

    本人の平熱より1℃以上高ければ発熱とみなされますが、一般的には38℃以上あれば明らかです。
    体温の上昇が身体の免疫能を高めて生体防御機構に有利に働く、またウイルスの発育増殖を抑制する、といわれていますが、一方、熱を下げることで全身倦怠感や頭痛、筋肉痛、関節痛などを和らげ、体力の消耗を軽くし、食事や水分の摂取を促すことができます。

    熱があっても元気で、水分が十分に取れていれば熱を下げる必要はありませんが、発熱に伴って苦痛が強い場合には、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱薬を使って熱を下げた方がいいでしょう。ただし、新生児や生後3か月未満の乳児では体温調節機能が未熟であるなどの理由から、解熱薬は使わない方がいいとされています。

  2. 鼻水・鼻づまりへの対応

    ウイルスが鼻粘膜に侵入して起こる炎症によって、鼻水・鼻づまりが起きます。
    一般療法としては、蒸しタオルで鼻を温めるだけでも鼻づまりをある程度改善できます。逆に寒冷刺激は鼻の粘膜の腫れを引き起こし、鼻づまりが強くなります。

    鼻水の中にはウイルスや細菌のほかに、炎症を重症化させる様々な物質も含まれているので、鼻水を鼻内から取り除くことには意味があります。鼻をかめるならいいですが、鼻をかめない乳児などでは、積極的に鼻水を吸い出してあげるべきで、口で吸い出す器械や、電動の吸引器が市販されており、これらの利用も有効です。

    お薬としては、抗ヒスタミン薬、血管収縮薬、消炎酵素薬、粘液溶解薬などが有効です。
    「かぜ」の発症からしばらくしても治らない場合は、細菌感染が合わせて起こっていることが多いので、抗菌薬も有効になります。

  3. のどの痛みへの対応

    「かぜ」による、のどの痛みの大半は1~2週間で治りますが、中には緊急を要する病気があります。急性喉頭蓋炎、扁桃周囲膿瘍、扁桃周囲炎などで、のどの痛みが非常に強く、のども腫れてきます。腫れがさらに強くなると、呼吸困難から窒息死に至る危険性もあります。

    ここに注意

    のどは、口を開けた時に見える中咽頭部分の観察だけでなく、鼻の奥(上咽頭)やのどの奥(下咽頭・喉頭)の観察も合わせて行うことが大切です。
    当院では先端が柔らかくて細い電子ファイバースコープ(内視鏡)を使用して、のどを詳細に診察しています。
    のどの痛みが強い時には、耳鼻咽喉科を受診してください。

    治療としては、消炎剤等の服用、外用薬(うがい薬、トローチ、局所塗布溶液、吸入・ネブライザー用液)のほか、細菌感染が考えられる場合は抗菌薬も飲んでいただきます。

  4. せきへの対応

    「かぜ」にせきを伴うことは一般的で、普通は自然に治ります。
    本来、せきは生体防御反応の一つであり、特に気道内にたまった分泌物(痰)を排出する役割があるので、せきは押さえないで痰の排出を優先させるべきですが、強いせきこみのために眠れないようなとき、せきのし過ぎで肋骨骨折を引き起こす恐れがあるようなときは、せき止めのお薬も使います。

さいごに

「かぜ」は最もポピュラーな病気であり、健常な大人で毎年平均3-4回、幼児では平均6-7回かぜをひくといわれています。

通常は3~7日間で治ってきますが、二次的に細菌感染が起こることがあり、その結果、中耳炎や副鼻腔炎(蓄膿症)、気管支炎、肺炎といった合併症を引き起こすことになります。

特に乳幼児では「かぜ」の30~40%に「急性中耳炎」を合併していたとの報告があり、かぜは中耳炎の引き金になるだけでなく、中耳炎自体を長引かせ、治りにくくさせる要因になります。

かぜは万病の元、こじらせる前に医療機関を受診して下さい。

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